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免税事業者のメリット・デメリットと選び方を徹底解説

中本 雄二 / 更新:2026-07-04
免税事業者のままでいくか、課税事業者になってインボイス登録するか。私も自分の会社で同じ判断をしてきたが、正直この選択は年商や取引先で答えが真逆になる。結論から言えば、消費者向けの商売なら免税を続けても実害は小さく、企業を相手にするなら2割特例を使った登録が現実的な落としどころだ。
  • 免税事業者とは、基準期間の課税売上高が1000万円以下で消費税の納付が免除される事業者のこと。
  • インボイス制度で免税事業者は適格請求書を発行できず、取引先が仕入税額控除を受けられない。
  • 企業相手(BtoB)なら値下げ交渉や取引見直しのリスクがあり、消費者相手(BtoC)なら影響は小さい。
  • 課税事業者になるなら2割特例を使えば、売上税額の2割の納税で済む(対象期間限定)。
  • 免税事業者への一方的な値下げ強要は下請法・独占禁止法に触れる可能性がある。

免税事業者とは?消費税が免除される仕組みと判定基準

【最新版】インボイス制度で損をする?免税と課税のメリット・デメリットをプロが解説します
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免税事業者とは、消費税の納税義務が免除される事業者のことで、判定の分かれ目は年商1000万円だ。

消費税は本来、売上で預かった税から仕入で払った税を差し引いて納める。ところが規模の小さい事業者には、その手間と負担を免除する仕組みがある。それが免税事業者だ。

免税事業者は消費税の納付が不要になる

免税事業者は、お客様から受け取った消費税を国に納める必要がない。ここが最大のポイントだ。

税抜1000円+消費税100円で売っても、その100円を納めなくていい。実務ではこの分が手元に残る。私も開業初期はこの恩恵を受けていた。

年商1000万円が課税事業者との分かれ目

基準期間の課税売上高が1000万円を超えると、その年から課税事業者になる。これが1000万円と消費税の関係の核心だ。

逆に1000万円以下なら、原則として免税でいられる。開業直後で基準期間の売上がない場合も、一定条件で免税になる。

基準期間と特定期間による判定の仕方

判定には「基準期間」と「特定期間」の2つの物差しがある。順番に見ていく。

免税・課税の判定に使う2つの期間
期間いつを見るか判定の基準
基準期間個人は前々年、法人は前々事業年度課税売上高が1000万円以下なら免税の対象
特定期間個人は前年1〜6月、法人は前事業年度の前半6か月課税売上高または給与支払額が1000万円超なら課税事業者

基準期間で1000万円以下でも、特定期間で1000万円を超えると課税事業者になる。ここを見落とすと後で慌てる。詳しい定義は国税庁の資料で確認しておきたい。

免税事業者のメリット・デメリットを一覧で比較

免税事業者のメリットは消費税を納めなくて済むこと、デメリットは取引先が仕入税額控除を受けられないことに集約される。

免税事業者でいることの主なメリット・デメリット
観点内容
メリット受け取った消費税の納付が不要
メリット消費税の申告・帳簿づけの事務負担がない
メリット会計ソフトやシステムの追加コストが要らない
デメリット適格請求書(インボイス)を発行できない
デメリット取引先が仕入税額控除を受けられず敬遠されやすい
デメリット値下げ交渉や取引見直しを持ちかけられることがある

免税事業者でいる主なメリット

一番大きいのは、預かった消費税をそのまま手元に残せること。申告書の作成も要らないので、時間も取られない。

正直、事務作業が丸ごとゼロなのはありがたい。私は課税事業者になってから、この負担の重さを痛感した。

免税事業者でいる主なデメリット

デメリットはインボイス制度の登場で一気に重くなった。取引先が企業の場合、免税事業者との取引はコスト増になる。

率直に言うと、BtoB中心の事業者にとってはメリットよりデメリットの方が大きくなった。ここは両論併記で無難に書きたくない。

インボイス制度で適格請求書を発行できない影響

免税事業者は適格請求書発行事業者になれないため、インボイスを出せない。すると取引先はその仕入分の消費税を控除できなくなる。

ただし経過措置があり、免税事業者からの仕入でも一定割合は控除できる。この割合は段階的に縮小していく。

免税事業者からの仕入に対する仕入税額控除の経過措置
期間控除できる割合
2023年10月〜2026年9月仕入税額相当額の80%
2026年10月〜2029年9月仕入税額相当額の50%
2029年10月以降控除なし(原則)

つまり今は8割控除できるので、取引先の負担はまだ小さい。だが50%、そしてゼロへと縮んでいく。この時間軸が判断の鍵になる。

免税事業者を続けるか課税事業者になるかの選択肢を比較

選択肢は大きく「免税を続ける」「課税事業者になって本則課税」「同・簡易課税」「同・2割特例」の4つに整理できる。

どれを選ぶかで納税額も手間も変わる。まず全体像を表で見てほしい。

4つの選択肢の比較
選択肢消費税の納付インボイス発行事務負担
免税を続ける不要できないほぼなし
課税・本則課税売上税額−仕入税額できる重い(実際の仕入を集計)
課税・簡易課税売上税額×みなし仕入率で計算できる中(仕入集計が簡素)
課税・2割特例売上税額×20%できる軽い(対象期間限定)

免税事業者を継続する場合の対応

免税を続けるなら、取引先にインボイスを出せない前提での価格・条件の見直しが必要になる。

消費者相手なら何もしなくていい。企業相手なら、内税方式に切り替えて実質的に消費税分を吸収する、といった対応を考えることになる。

課税事業者に切り替える場合の手続き

課税事業者になるには、原則「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に出す。インボイス登録はこれとは別の手続きだ。

ここで多くの人が混同する。適格請求書発行事業者の登録申請をすれば、登録日から自動的に課税事業者になる。私も最初、届出とインボイス登録が別物だと知らずに戸惑った。

インボイス登録と課税事業者の選択届出は別の手続き。ただし登録申請を出せば登録日以後は課税事業者になるため、免税期間中に登録するなら選択届出は原則不要。

本則課税・簡易課税・2割特例の3方式を比べる

納税額を左右するのが計算方式で、免税事業者から登録した人の多くは2割特例が有利になる。

3方式の計算方法と向き不向き
方式計算の仕方向いている人
本則課税売上の消費税−仕入の消費税仕入や設備投資が多い事業者
簡易課税売上税額×みなし仕入率(業種で40〜90%)基準期間の課税売上5000万円以下で仕入が少ない事業者
2割特例売上税額×20%免税事業者からインボイス登録した人(対象期間限定)

2割特例は事前届出が不要で、申告のときに選べる。まずこれが使えるかを確認するのが近道だ。

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どちらが得かは、課税事業者になったときの納税額と、免税のまま失う取引・値下げ幅を天秤にかけて決まる。

ここは一般論だけだと判断できない。私が自分の頭で計算した数字を出す。以下は税抜売上に消費税10%を上乗せしている前提の試算だ。

どちらが得か判断するための計算の考え方

考え方はシンプルで、「登録して納める消費税」と「免税のまま値下げされる金額」を比べればいい。

2割特例で登録した場合の納税額イメージ(筆者試算・税抜売上×10%を売上税額とし、その20%を納付)
あくまで単純化した試算。実際は事業内容で変わる。
税抜売上売上にかかる消費税2割特例での納付額
500万円50万円10万円
800万円80万円16万円
1000万円100万円20万円

税抜800万円なら、2割特例での納税は16万円。もし免税のままで取引先から消費税分(80万円)まるごと値引きを迫られるなら、登録して16万円払う方が明らかに得だ。

簡易課税を選んだ場合の税額イメージ

簡易課税は業種ごとのみなし仕入率で納税額が決まる。2割特例が使えなくなった後の受け皿として重要だ。

簡易課税のみなし仕入率(業種区分)
事業区分主な業種みなし仕入率
第1種卸売業90%
第2種小売業80%
第3種製造業・建設業など70%
第4種飲食店業など60%
第5種サービス業など50%
第6種不動産業40%

サービス業(第5種)で税抜売上800万円なら、売上税額80万円×(1−50%)=40万円が納税額の目安。2割特例の16万円と比べると重い。だから2割特例が使える間はそちらを使う、というのが私の実感だ。

販売価格を内税方式に変える場合の損得

免税を続ける道として、税込価格を据え置いて実質的に消費税分を自分でかぶる「内税方式」への切り替えがある。

例えば税抜1000円+税100円=1100円で売っていたものを、そのまま1100円の内税として売る。取引先の負担は変わらず、こちらが100円分を実質値引きする形だ。

仕入も内税で受けられれば、その分の負担は緩和される。ただしこの調整はケースごとに損得が変わるので、電卓を叩いて確かめるしかない。

業種・働き方別で見る有利不利の判断

有利不利は取引先が企業か消費者かでほぼ決まり、消費者中心なら免税維持が有利になりやすい。

同じフリーランスでも、相手が誰かで結論は正反対になる。ここを一括りにする記事が多いが、それは危ない。

フリーランス・個人事業主・副業の場合

企業と継続取引するフリーランスは、登録を求められるケースが多い。相手が仕入税額控除を必要とするからだ。

副業で年商が小さく、取引先も少ないなら、無理に登録せず様子を見る手もある。事務負担と天秤にかけて決めればいい。

一人親方・大家など特定業種の場合

建設業の一人親方は、元請けからインボイス登録を要請されることが多い立場だ。取引継続を重視するなら登録が現実的になる。

一方、大家業は事情が違う。住宅の家賃は消費税が非課税なので、住宅賃貸だけならインボイスの影響をほとんど受けない。店舗や事務所の賃貸だと課税取引になるので、そこは別の判断が要る。

顧客が消費者中心(BtoC)なら免税を維持しやすい理由

消費者はインボイスを必要としないため、BtoCの事業者は免税を続けても取引に響きにくい。

美容室、学習塾、個人経営の飲食店、ネット物販の一部など、お客様が一般消費者中心なら登録を急ぐ理由は薄い。私の周りでも、この層は免税のままの人が多い。

取引先が一般消費者中心なら、免税事業者を続けても実害は小さい。判断はまず「相手が仕入税額控除を必要とするか」で切り分ける。

取引先とのトラブルと下請法・独占禁止法上の注意点

免税事業者だからといって、一方的に代金を引き下げたり取引を打ち切ったりする行為は、下請法や独占禁止法に触れるおそれがある。

ここは知らないと泣き寝入りする。逆に知っていれば毅然と交渉できる。

取引打ち切り・値下げ交渉を受けた実例

実際、「登録しないなら消費税分は払えない」「登録しないと発注を止める」と迫られたという声は珍しくない。私の取引先仲間にもいた。

問題は、その値下げ幅や打ち切りが一方的で合理性を欠く場合だ。単なる交渉と、法に触れる強要は線引きがある。

免税事業者への不当な条件変更は違法になる

公正取引委員会は、免税事業者に対する一方的な取引条件の変更が独占禁止法・下請法上問題になり得るとの考え方を示している。

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中本 雄二

会社経営者 ・ 節税・補助金を実務で運用 ・ セーフティ共済・小規模企業共済を活用

中小企業の経営者。自分の会社で節税と補助金を実践してきた。税理士に任せきりにせず、制度を自分で調べて使う派。失敗や払いすぎた経験もあるからこそ、現実的な打ち手を語れる。

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