個人事業主の手取り計算|10ステップと年収別シミュレーション早見表
- 個人事業主の手取りは「売上−経費−税金−社会保険料」で求まる。
- 年収500万円の個人事業主の手取りは約374万円が目安。
- 引かれるのは所得税・住民税・国民健康保険・国民年金の4つが柱。
- 青色申告の65万円控除を使うだけで手取りは数万〜十数万円変わる。
- 手取りを増やす王道は経費のもれ防止と小規模企業共済・iDeCoの活用。
個人事業主の手取りとは?計算の全体像を先に押さえる

個人事業主の手取りとは、売上から必要経費・税金・社会保険料をすべて引いて、最終的に自分の手元に残るお金のことです。
ここを勘違いすると資金繰りが崩れます。売上=使えるお金、ではありません。私が独立したての知人に必ず言うのは「売上の2〜3割は先に取られる前提で生活を組め」です。
手取りとは(売上・所得・課税所得の違い)
言葉が似ていて混乱しやすいので、先に整理します。
| 用語 | 意味 | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 売上(収入) | 1年間に受け取った報酬の総額 | 入ってきたお金の全部 |
| 所得 | 売上から必要経費を引いた額 | もうけの部分 |
| 課税所得 | 所得から所得控除を引いた額 | 税金の計算対象になる額 |
| 手取り | 売上から経費・税金・社会保険料を引いた額 | 最終的に残るお金 |
税金は「売上」ではなく「課税所得」にかかります。だから経費と所得控除をきちんと積むほど、税金が減って手取りが増える。ここが全ての起点です。
手取り計算に関わる税金と社会保険料の一覧
個人事業主の手取りから引かれる項目は、大きく税金と社会保険料に分かれます。
- 税金:所得税・住民税・(条件により)個人事業税・消費税
- 社会保険料:国民健康保険・国民年金・(40歳以上は)介護保険
会社員なら会社が半分払ってくれた社会保険。個人事業主は全額自己負担です。ここが手取りを重くする一番の理由だと私は実感しています。
手取りシミュレーションとは何かをやさしく解説
個人事業主の手取りシミュレーションとは、自分の売上を入力して、税金・社会保険料を差し引いた残額をあらかじめ試算することです。
確定申告の直前に「え、こんなに払うの」と青ざめないための予防策。自営業は手取り年収が読みにくいからこそ、年の途中で一度ざっくり計算しておくと、納税用の口座に取り分けておけます。
個人事業主の手取りを計算する10ステップ
個人事業主の手取りは、売上から経費・控除・税金・社会保険料を順番に引いていく10ステップで求められます。
順番が大事です。所得を出す→控除を引く→税金を計算する、の流れを飛ばすと数字が合いません。
年間の収入(売上)と必要経費を計算する
まず1年間(1月〜12月)の売上を合計します。次に、その売上を得るために使ったお金=必要経費を集計します。
経費で迷うのはグレーゾーン。判断基準はシンプルで「事業のために使ったと説明できるか」です。自宅兼事務所の家賃や通信費は、事業で使う割合分だけを家事按分で経費にできます。
所得・所得控除・課税所得を求める
売上から経費を引くと「所得」が出ます。そこからさらに所得控除を引くと「課税所得」になります。
所得控除には、誰でも使える基礎控除、国民年金や国保の社会保険料控除、iDeCoの掛金控除などがあります。青色申告なら最大65万円の青色申告特別控除も所得から引けます。
所得税・住民税を計算する
所得税は課税所得に税率をかけて求めます。税率は課税所得が増えるほど上がる累進課税です。
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
住民税はおおむね課税所得の10%(都道府県民税+市区町村民税)に均等割を足したイメージです。ここに復興特別所得税も少し乗ります。
国民健康保険料・国民年金保険料を計算する
国民年金保険料は定額で、2024年度は月額16,980円です。国民健康保険は所得に応じて変わり、住む自治体で金額が違います。
最後に、売上から経費・所得税・住民税・国保・国民年金をすべて引いた額が手取りです。ここまでが10ステップ。
【年収・月収別】自営業の手取り額シミュレーション早見表
個人事業主の手取りは、年収500万円で約374万円、年収1,000万円で約694万円が目安です。
下の早見表は、経費や控除の前提で数字が動く「概算の目安」です。実際は経費率や自治体、青色申告の有無で変わります。自分に近い行を探してください。
| 年収(月収) | 手取り額の目安 |
|---|---|
| 120万円(月10万円) | 約90万円 |
| 240万円(月20万円) | 約184万円 |
| 300万円(月25万円) | 約229万円 |
| 360万円(月30万円) | 約275万円 |
| 400万円(月35万円) | 約303万円 |
| 500万円(月40万円) | 約374万円 |
| 600万円(月50万円) | 約436万円 |
| 700万円(月60万円) | 約498万円 |
| 800万円(月65万円) | 約560万円 |
| 900万円(月75万円) | 約628万円 |
| 1,000万円(月約85万円) | 約694万円 |
年収120万〜400万円の手取り目安
この層は手取り率がまだ高めです。年収120万円で約90万円、年収400万円で約303万円。税率が低く、社会保険料の負担割合も相対的に軽いためです。
ただし年収120万円クラスでも国民年金と国保はほぼ定額でかかる。売上が小さいほど、固定でかかる社会保険料の重みが効いてきます。
年収500万〜700万円の手取り目安
年収500万円で約374万円、700万円で約498万円。ちょうど独立して軌道に乗ってきた層です。
正直、このゾーンが一番「引かれてる感」を感じやすい。所得税率が20%に上がり、住民税・国保も所得比例でぐっと増えるからです。ここで青色申告と経費計上をサボると、手取りで数十万円損します。
年収800万〜1,000万円の手取り目安
年収800万円で約560万円、1,000万円で約694万円。手取り率は7割を切ってきます。
この規模になると、後で触れる法人化を検討する価値が出てきます。私の周りでも、この辺りで会社を作る人が一気に増えました。
個人事業主が支払う税金と社会保険料の中身

個人事業主が払うのは、所得税・住民税・個人事業税・消費税の4つの税金と、国民健康保険・国民年金・介護保険の社会保険料です。
全部が全員にかかるわけではありません。かかる条件を分けて見ていきます。
住民税・消費税・個人事業税
住民税は前年の所得にかかり、6月ごろに通知が来ます。独立初年度の翌年、収入が落ちたのに前年分の住民税がずしっと来る。ここでキャッシュが詰まる人を何人も見ました。
個人事業税は業種によってかかり、税率は業種で3〜5%。事業所得290万円までの控除があるので、所得290万円以下なら基本かかりません。消費税は原則、課税売上高が1,000万円を超えた事業者が納税します。
国民健康保険・国民年金・介護保険
国民健康保険は所得に応じて上がり、上限があります。国民年金は前述のとおり2024年度で月16,980円の定額。40歳以上65歳未満になると、国保に介護保険分が上乗せされます。
つまり40歳の誕生日を境に、同じ所得でも保険料が増えます。これは見落としがちなので覚えておいてください。
インボイス制度導入後の消費税負担と手取りへの影響
インボイス制度で課税事業者になった小規模事業者は、これまで手元に残せた消費税分をそのまま納税することになり、実質的に手取りが減りました。
売上1,000万円以下で免税だった人が、取引先の求めで課税事業者に転換する。すると受け取った消費税を納める義務が生じます。
会社員と比べて分かる自営業の実質的な手取り負担
同じ年収でも、社会保険料を全額自己負担する個人事業主のほうが、会社員より手取りが少なくなりやすいです。
会社員は社会保険料を会社と折半します。個人事業主にその折半相手はいません。ここが実質負担の差の正体です。
給与所得者と個人事業主の手取り比較
会社員には給与所得控除があり、経費を実額で計算しなくても一定額が自動で引かれます。一方、個人事業主は経費を自分で積み上げる代わりに、青色申告特別控除や事業経費で調整の幅が大きい。
私の見立てでは、経費が少ない業種だと会社員のほうが手取りで有利、経費や控除を使い込める人は個人事業主が逆転しやすい。一概にどちらが得とは言えません。
扶養・配偶者控除など家族構成別の手取りの違い
配偶者を扶養に入れれば配偶者控除で課税所得が下がり、手取りが増えます。扶養親族が多いほど所得控除が積み上がるので、同じ年収でも独身と子育て世帯で手取りは変わります。
逆に配偶者が働いて所得が一定を超えると配偶者控除は使えなくなる。世帯全体でどう組むかで最適解が変わる部分です。
業種や住む自治体による保険料・税率の地域差
国民健康保険料と個人事業税率は、業種と自治体で差が出ます。同じ所得でも住む市区町村で国保料が変わるのは、料率を各自治体が決めているためです。
引っ越しで手取りが変わることすらある。移住を考えるなら、その自治体の国保料率も一度調べる価値があります。
個人事業主が手取り額を増やすためのコツ
手取りを増やす一番現実的な方法は、青色申告で控除を取り、経費をもれなく計上し、小規模企業共済やiDeCoで所得控除を積むことです。
派手な裏技はありません。地味な積み上げが効きます。私自身、小規模企業共済とセーフティ共済で毎年しっかり所得を圧縮しています。
青色確定申告と経費のもれない計上
青色申告にすると最大65万円の特別控除が使えます。これを使うだけで課税所得が65万円下がる。白色のままはもったいない。
開業届と青色申告承認申請書はセットで出します。青色を使いたい年の3月15日まで(その年に開業したなら開業から2か月以内)が申請期限。これを逃すとその年は白色確定申告になります。
小規模企業共済・iDeCo・国民年金基金の比較活用
掛金が全額所得控除になる3制度を比べます。目的が違うので、組み合わせて使うのが基本です。
| 制度 | 主な目的 | 掛金の上限 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 事業主の退職金づくり | 月7万円(年84万円) | 廃業・退職時に共済金を受取。貸付制度もある |
| iDeCo | 老後資金づくり | 加入区分により上限あり | 原則60歳まで引き出せない。運用益も非課税 |
| 国民年金基金 | 国民年金の上乗せ年金 | iDeCoと合算で上限あり | 終身年金型を選べる。将来の年金を厚くする |
