法人税申告書 別表の書き方|別表一・四・五を記入例つきで解説
- 別表は決算書を作ってから、別表四→別表一→別表五の順で書くと数字がつながる。
- 別表四は会計上の利益から課税所得を計算する表で、加算・減算を書き込む。
- 別表一は課税所得に税率をかけて法人税額を計算する表。
- 中小企業は所得800万円以下の部分に軽減税率15%が適用される。
- 別表四の所得と別表五の増減は必ず一致するので、そこで検算する。
法人税申告書(別表)とは?書き始める前に知っておく基礎知識

法人税申告書の別表とは、法人税額を計算するための計算明細書で、別表一から別表十六までの様式に分かれています。
私が初めて自社の申告書を開いたとき、正直「これ全部書くのか」と身構えました。でも実際に使う別表は限られています。
別表とは何か・主要な別表の種類と役割
別表は、決算書の利益をもとに税金を計算するための「調整の記録」です。会計の利益と、税金を計算するための所得は、金額が違うことがある。その差を埋めるのが別表の役割です。
中小企業がよく使う主要な別表を表にまとめました。
| 別表 | 名称(通称) | 主な役割 |
|---|---|---|
| 別表一 | 各事業年度の所得に対する法人税額の計算 | 法人税額・地方法人税額を計算する |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 会計上の利益から課税所得を計算する |
| 別表五(一) | 利益積立金額・資本金等の額の計算 | 税務上の純資産を管理する |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等 | 法人税や住民税の納付状況を記録する |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入等 | 繰越欠損金を管理する |
| 別表十六 | 減価償却資産の償却額の計算 | 減価償却費を計算する |
逆に言えば、赤字続きで株主も単純な会社なら、別表一・四・五・七だけで済むこともあります。
別表一・別表四・別表五の関係を図でつかむ
3つの別表はバラバラではなく、一本の線でつながっています。
- 別表四で、会計の利益を調整して課税所得を出す。
- その課税所得を別表一に持っていき、税率をかけて法人税額を計算する。
- 計算した税額を別表五(二)に記入し、税務上の純資産(別表五(一))と整合させる。
つまり別表四が入口、別表一が計算の心臓、別表五が出口です。この流れさえ頭に入れば、順番で迷いません。
作成に必要な書類・道具・前提条件
別表を書き始める前提は、決算が締まっていることです。ここが終わっていないと何も進みません。
- 確定した決算書(貸借対照表・損益計算書)が手元にある。
- 総勘定元帳など、金額の根拠をたどれる帳簿がある。
- 前期の申告書一式(繰越欠損金や積立金の引き継ぎに使う)。
- 国税庁の別表様式、または申告ソフト。
法人税申告書(別表)作成の全体手順と所要時間・難易度
別表作成は、決算書ができていれば7ステップで、慣れれば半日ほどで完成します。
難易度は、単純な会社なら中級、特殊な取引が多いと一気に上がります。私の実感では、赤字の初年度が一番ラクでした。
所要時間の目安と難易度
| 会社の状況 | 使う主な別表 | 所要時間の目安 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 設立初年度・赤字 | 別表一・四・五・七 | 半日程度 | 低〜中 |
| 黒字・単純な取引 | 別表一・四・五・七・十六 | 1日程度 | 中 |
| 黒字・特殊な取引が多い | 上記+別表六など複数 | 数日 | 高 |
これはあくまで私自身が自社で作ってきた体感です。初めての年は倍かかると思っておくと安全です。
決算書作成から別表一までの7ステップ
- 当期の取引を記帳し、決算書を確定させる。
- 特定の株主等がいる場合は別表二を作成する。
- 必要に応じて別表六〜十六を作成する。
- 別表五(一)(二)の期首残高を前期から転記する。
- 別表四で加算・減算を書き、課税所得を計算する。
- 別表一で法人税額・地方法人税額を計算する。
- 計算した税額を別表五(二)に記入し、全体を整合させる。
順番は入れ替えないほうがいい。別表四の所得が出ないと別表一の税額が計算できず、税額が出ないと別表五が締まらないからです。
各ステップの「ここまでできれば正しい」確認ポイント
各ステップにゴールの目印を置くと、迷子になりません。
- 決算書:当期純利益の額が確定していればOK。
- 別表四:末尾の「所得金額」がマイナスかプラスで出ていればOK。
- 別表一:課税所得に税率をかけた法人税額が算出できていればOK。
- 別表五:期首+当期増減=期末が縦横で合っていればOK。
別表四の書き方【数値付き記入例】
別表四は、決算書の当期純利益に「税務上の加算・減算」を足し引きして、課税所得を計算する表です。
ここが別表作成の心臓部です。私が最初に覚えたのもこの表でした。
別表四で課税所得を計算する流れ
スタートは会計上の当期純利益、ゴールは課税所得。この間を加算と減算でつなぎます。
- 先頭に決算書の当期純利益(または損失)を書く。
- 損金にできない費用を「加算」する。
- 益金にしない収益や損金にできる項目を「減算」する。
- 加算と減算を反映した結果が「所得金額」になる。
加算・減算項目の具体的な記入例
仮に当期純利益が500万円、法人税等の損金不算入(住民税など)が80万円、交際費の損金不算入が20万円あるケースで書いてみます。
| 区分 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 当期利益 | 5,000,000円 | 決算書の当期純利益をそのまま記入 |
| 加算:損金不算入の法人税等 | 800,000円 | 会計上費用でも税務では損金にできない |
| 加算:交際費等の損金不算入 | 200,000円 | 限度超過分を加算 |
| 所得金額 | 6,000,000円 | 500万+80万+20万=600万 |
この600万円が、次の別表一に持っていく課税所得です。数字がここでつながります。
つまずきやすい点と対処法
正直、私が一番つまずいたのは「加算と減算のどちらに書くか」でした。
うまく所得が合わないときは、別表五(二)の納税充当金の動きと突き合わせてください。法人税等の加算漏れが原因のことが多い。
別表一の書き方【税額計算の記入例】

別表一は、別表四で出した課税所得に税率をかけて、納める法人税額と地方法人税額を計算する表です。
別表四が終わっていれば、ここは電卓仕事に近い。ただし税率の区分だけは注意が必要です。
別表一で法人税額・地方法人税額を計算する手順
- 別表四の所得金額を、別表一の「所得金額」欄に転記する。
- 所得に法人税率をかけて法人税額を計算する。
- そこから税額控除があれば差し引く。
- 法人税額をもとに地方法人税額を計算する。
中小企業の軽減税率・特例の反映方法
資本金1億円以下の中小企業は、所得のうち年800万円以下の部分に軽減税率15%が適用されます。800万円を超える部分は23.2%です。
先ほどの課税所得600万円なら、全額が800万円以下なので15%が適用されます。
| 区分 | 計算 | 税額 |
|---|---|---|
| 800万円以下の部分 | 6,000,000円 × 15% | 900,000円 |
| 800万円超の部分 | 0円 × 23.2% | 0円 |
| 法人税額合計 | - | 900,000円 |
軽減税率15%は租税特別措置による特例で、適用期限があります。申告の年に有効かどうかは国税庁の最新情報で確認してください。
書き終えた完了状態の確認
別表一に法人税額と地方法人税額の両方が記入され、差引確定税額が算出されていれば完了です。この状態になれば、納付書に書く金額が確定します。
別表五の書き方と別表間の数字の連動・検算方法
別表五は、税務上の純資産と租税公課の納付状況を管理し、別表四の所得と一致するかを検算するための表です。
ここで数字が合うと、申告書全体が正しいと確信できます。逆に合わないと、どこかにミスがある証拠です。
別表五への記入手順と税額の転記
- 別表五(一)に、前期末の利益積立金額を期首残高として転記する。
- 当期の所得や納税による増減を記入する。
- 別表五(二)に、法人税・地方法人税・住民税などの納付状況を書く。
- 別表一で計算した確定税額を別表五(二)の「当期発生税額」に記入する。
別表四と別表五の整合性チェック(検算)
検算の基本はシンプルです。別表四の留保所得と、別表五(一)の当期増減額が一致するか。ここがズレたら止まって見直します。
私は毎年、この検算が合った瞬間だけホッとします。ここが合えば大きな間違いはまずない。
繰越欠損金(別表七)・減価償却(別表十六)の記載
別表七には、前期までの繰越欠損金を記入し、当期の所得と相殺します。中小企業は繰越期間10年、所得の全額まで控除できます。
別表十六には、建物や車両などの減価償却費を計算して記入します。会計上の償却費と税務上の限度額を突き合わせ、超えた分は別表四で加算します。
ケース別・別表の書き方の具体例
別表の書き方は、赤字か黒字か、修正申告かで記入の重点が変わります。
自社に近いケースを見れば、手を動かすイメージがつかめます。
設立初年度の赤字のケース
設立初年度で赤字なら、別表四の所得金額はマイナスになります。この欠損金を別表七に記録し、翌期以降に繰り越します。
仮に初年度の欠損が300万円なら、別表七に300万円を計上。法人税は0円ですが、住民税の均等割は所得に関係なくかかるので、そこだけ忘れないでください。
設立2年目以降の黒字のケース
2年目で黒字が出たら、前期の繰越欠損金を別表七で当期所得と相殺できます。
当期所得が500万円、前期繰越欠損金が300万円あれば、相殺後の課税所得は200万円。この200万円に軽減税率をかけて税額を計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当期所得金額 | 5,000,000円 |
| 繰越欠損金の控除 | △3,000,000円 |
| 差引課税所得 | 2,000,000円 |
| 法人税額(200万×15%) | 300,000円 |
修正申告・更正の請求を行う場合
申告後に誤りに気づいたら、税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求をします。どちらも別表を作り直します。
修正申告では、正しい所得で別表四・一を作り直し、当初申告との差額を追加で納めます。過少申告加算税や延滞税がつくことがあるので、気づいたら早く出すのが得です。
申告書以外の添付書類と地方税・電子申告の進め方

法人税申告書には、勘定科目内訳明細書と法人事業概況説明書の添付が必要で、地方税の申告も別途行います。
別表だけ書いて終わりではありません。ここを忘れると申告が完結しません。
勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書の書き方
勘定科目内訳明細書は、売掛金や借入金などの中身を取引先ごとに書き出す書類です。決算書の残高と一致させます。
法人事業概況説明書は、事業内容や従業員数、月別の売上などを書く書類。税務署が会社の全体像をつかむために使います。
