法人税の計算シミュレーション|税率と実効税率でいくらか試算する手順
- 法人税の試算に必要なのは決算書の「税引前当期純利益」1つだけで、3分で概算できる。
- 中小企業は課税所得800万円以下の部分に軽減税率15%、超えた部分に基本税率23.2%がかかる。
- 法人3税(法人税・法人住民税・法人事業税)を合わせた実効税率で、実際の手取り負担を見るのが正しい使い方。
- 繰越欠損金・税額控除・自治体の超過税率で、簡易試算と実際の申告額は必ずズレる。
- 外形標準課税や役員報酬の最適化が絡むケースは、自分の試算だけで判断せず税理士に確認すべき。
法人税の計算シミュレーションは3分でできる|必要な準備と手順

法人税の概算は、決算書の「税引前当期純利益」に税務調整を加えて課税所得を出し、そこに税率を掛けるだけで求められます。
所要時間と難易度・用意するもの(決算書)
所要時間はおよそ3分。難易度は低めですが、税務調整を厳密にやろうとすると急に難しくなります。
用意するのは決算書、正確には損益計算書の一番下に近い「税引前当期純利益」の金額だけです。
正直、初回のざっくり試算なら利益額を1つ入れれば十分。細かい調整は後回しでいい、というのが私の実感です。
手順1:税引前当期純利益を確認する
損益計算書を開き、「税引前当期純利益」の行を見ます。ここが試算の出発点です。
たとえば税引前当期純利益が1,000万円だったとします。この時点では、まだ税金は引かれていない利益です。
ここまでできていれば、金額が1つ手元にあればOK。難しく考えなくて大丈夫です。
手順2:課税所得を出す(税務調整)
税引前当期純利益に「加算項目」を足し、「減算項目」を引いたものが課税所得(所得金額)です。
加算の代表例は、交際費の損金不算入額や、税務上認められない引当金の繰入超過。減算の代表例は、受取配当等の益金不算入です。
つまずきやすいのがここ。ざっくり試算の段階では、大きな調整項目がなければ「税引前利益≒課税所得」と置いてしまって構いません。
手順3:税率を掛けて法人税・住民税・事業税を合算する
課税所得に法人税率を掛けて法人税額を出し、そこに法人住民税・法人事業税を加えて「実際に払う額」を出します。
中小企業なら、課税所得800万円以下の部分は15%、超えた部分は23.2%。1つずつ手で計算するのは面倒なので、実際は実効税率でまとめて掛けたほうが早いです。
実効税率は資本金1億円以下の中小企業でおおむね33〜34%前後。仮に課税所得1,000万円なら、法人3税合わせて約330万円が目安になります。
ここまで出れば「うちは今期300万円ちょっと納税に取っておけばいい」という資金繰りの判断材料になります。
うまく計算できないときの対処と完了の目安
金額が想定よりやたら大きい・小さいと感じたら、まず課税所得の桁を確認してください。税引前利益と課税所得を取り違えている、赤字なのに黒字で計算している、というのがよくあるつまずきです。
赤字(欠損)の年は法人税・事業税はゼロですが、法人住民税の均等割だけは払います。ここを見落とすと「赤字なのに税金?」と慌てます。
課税所得×実効税率で3税合計の概算が出て、資金繰りの目安がつかめたら、この手順は完了です。
法人税とは何か|対象・法人3税・国税と地方税の違い
法人税とは、会社などの法人が稼いだ所得(利益)に対してかかる国税です。
法人税の定義と課税対象
課税対象は「益金-損金」で計算した所得。売上や利益そのものではなく、税務ルールで計算し直した所得に税率を掛けます。
国税庁も、法人税は「法人の所得金額などを課税標準として課される」と定義しています。会計上の利益とはズレる、というのがポイントです。
法人3税(法人税・住民税・事業税)の全体像
会社が利益に対して払う税金は、実質「法人3税」でひとまとまりです。内訳は国税の法人税、地方税の法人住民税と法人事業税(+地方法人税)。
私も最初、法人税だけ意識していて事業税・住民税を忘れ、資金繰りの読みを外したことがあります。3つセットで見ないと、実際の負担額はわかりません。
| 税目 | 国税/地方税 | 申告先 | 課税のかかり方 |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 国税 | 税務署 | 所得に課税 |
| 地方法人税 | 国税 | 税務署 | 法人税額に課税(付加税的) |
| 法人住民税 | 地方税 | 都道府県・市町村 | 法人税額割+均等割 |
| 法人事業税 | 地方税 | 都道府県 | 所得に課税(大企業は外形標準も) |
赤字でも払う均等割のしくみ
赤字でも必ず払うのが法人住民税の「均等割」です。所得がゼロでも、法人が存在するだけでかかります。
均等割は資本金と従業員数で額が決まり、自治体によって金額が異なります。小規模な会社なら年7万円前後が一つの目安ですが、正確な額は本店所在地の自治体で確認してください。
法人税の税率を整理|中小企業と大企業でいくら変わるか
法人税の基本税率は23.2%で、資本金1億円以下の中小企業は課税所得800万円以下の部分に軽減税率15%が使えます。
基本税率23.2%と軽減税率15%(800万円以下)の条件
基本税率は所得区分なく一律23.2%。ただし資本金1億円以下などの中小法人は、年800万円以下の所得部分だけ15%に下がります。
この軽減税率15%は本来19%の特例。適用には資本金1億円以下であることなどの条件があり、大企業の100%子会社などは除かれます。詳細は国税庁の税率ページで確認できます。
地方法人税・法人住民税・法人事業税の税率
法人税だけでは実際の負担はわかりません。地方法人税は法人税額に対して10.3%、法人住民税はそれに法人税割・均等割が乗り、法人事業税は所得に対して課税されます。
事業税・住民税の税率は自治体ごとに標準税率と超過税率の差があります。だから「同じ利益でも本店の場所で負担が違う」ということが起きます。
2025年改正と防衛特別法人税(付加税)の概要
2026年4月から、法人税額に対して原則4%を上乗せする「防衛特別法人税」が導入される予定です。
これは法人税額を課税標準にした付加税で、基礎控除(年500万円)を超える部分にかかる仕組みとされています。導入後は実効税率が数ポイント上がる方向に動くため、資金計画に織り込んでおくべき論点です。
税率まとめ一覧
| 区分 | 税率 |
|---|---|
| 法人税 基本税率 | 23.2% |
| 中小法人 軽減税率(所得800万円以下部分) | 15% |
| 地方法人税(法人税額に対して) | 10.3% |
法人税の実効税率とは|表面税率との違いと計算式

実効税率とは、法人3税を合わせた税負担が課税所得に対して何%になるかを示した率で、事業税が損金になることを織り込んだ「本当の負担率」です。
実効税率の定義と計算式
実効税率の計算式は、ざっくり「(法人税率×(1+地方法人税率+住民税率)+事業税率)÷(1+事業税率)」。事業税を損金算入できる分だけ、単純合計より少し低く出ます。
中小企業の実効税率はおおむね33〜34%前後。細かい率は資本金や自治体で変わるので、私は「約1/3持っていかれる」と覚えています。
表面税率・実効税率・負担率の違い
表面税率は各税率を単純に足したもの、実効税率は事業税の損金算入を反映した実質の率、負担率は実際に払った税額÷所得で出す結果値、という違いがあります。
資金繰りの試算に使うのは実効税率。「所得の何%を納税用に取っておけばいいか」を一番正しく表すのがこれです。
実効税率を使った概算シミュレーションの手順
手順はシンプルで、課税所得に実効税率(中小なら約33〜34%)を掛けるだけ。これで法人3税の合計概算が一発で出ます。
課税所得1,000万円なら約330万円前後。課税所得3,000万円なら約1,000万円前後。この掛け算だけで、資金繰りの当たりはつきます。
利益規模別の法人税シミュレーション早見表
課税所得が大きくなるほど軽減税率15%の恩恵は薄まり、23.2%部分の比重が増えるため、実効の負担率は所得が増えるほどじわじわ上がります。
以下は中小企業(資本金1億円以下)を想定し、実効税率を約33%として法人3税合計を概算したものです。実際は自治体・調整で前後します。
| 課税所得 | 法人3税の概算合計 | 備考 |
|---|---|---|
| 200万円 | 約66万円 | 800万円以下は軽減税率15%がフル適用 |
| 800万円 | 約264万円 | 軽減税率15%が使える上限 |
| 1,000万円 | 約330万円 | 800万円超の部分に23.2% |
| 3,000万円 | 約990万円 | 23.2%部分の比重が増える |
| 5,000万円 | 約1,650万円 | 負担額が大きく資金確保が要る |
| 1億円 | 約3,300万円 | 納税資金の事前準備が必須 |
課税所得200万〜800万円のケース
この帯は軽減税率15%がまるまる効く一番おいしいゾーンです。所得800万円でも法人税本体は120万円ほどに抑えられます。
設立して数年、まだ利益がこの規模なら、無理に節税に走るより素直に納めて内部留保を厚くするほうが、私は健全だと思っています。
課税所得1,000万〜5,000万円のケース
800万円を超えた部分は23.2%。このあたりから「節税でいくら残せるか」の差が効いてきます。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)の掛金は損金になり、年最大240万円まで積めます。私はこれで課税所得を圧縮しつつ、いざという時の資金も確保しています。
課税所得1億円のケース
実効税率約33%なら3税合計は3,300万円前後。ここまで来ると、納税資金を計画的に別枠で用意していないと確実に苦しくなります。
資本金1億円を超えると外形標準課税の対象になり、赤字でも資本金や付加価値に応じた事業税がかかります。規模拡大時の資本金設計は慎重に。
設立初年度・事業年度が12ヶ月未満のときの注意点
設立初年度や決算期変更で事業年度が12ヶ月未満になる場合、軽減税率が使える800万円の枠は月数按分されます。
たとえば事業年度が6ヶ月なら、軽減税率が使える所得は800万円÷12×6=400万円まで。ここを満額で計算すると税額を過少に見積もるので注意が必要です。
シミュレーション結果が実際の申告額とズレる要因【独自解説】
簡易シミュレーションと実際の申告額がズレる主因は、繰越欠損金・税額控除・自治体の超過税率・中間申告の4つです。
競合記事はここが薄い。でも実務で一番効くのはこの部分なので、経営者目線で厚めに書きます。
繰越欠損金・赤字企業の反映方法
過去の赤字(欠損金)は繰り越して、将来の黒字と相殺できます。中小法人は所得金額を限度に控除でき、繰越期間は10年です。
