家事按分の割合は?個人事業主の家賃・電気代の計算方法とやり方
- 家事按分とは、生活と事業の両方に使う費用を、事業で使った割合だけ経費にする仕組みです。
- 家賃は使用面積、電気代は使用時間やコンセント数など、合理的な基準で割合を決めます。
- 白色申告でも事業割合が明確なら家事按分は可能で、青色申告のような50%超の縛りは実務上ありません。
- 按分割合は自分で説明できる根拠(間取り図・使用時間の記録)を残すことが最重要です。
- 按分をしないと、本来経費にできた家賃や電気代の分だけ税金を払いすぎることになります。
家事按分とは?個人事業主が経費にできる割合の考え方

家事按分とは、家賃や電気代のように事業と生活の両方で使う支出を、事業で使った割合だけ経費に計上する処理のことです。
個人事業主は、自宅の一室を仕事場にしたり、私用のスマホで仕事の連絡をしたりします。この「混ざっている費用」を全額経費にはできません。だからといって全額あきらめる必要もない。事業分だけを切り分けるのが家事按分です。
家事按分の意味をわかりやすく解説
按分とは「割合に応じて分けること」。家事按分は、家事(生活)と事業に費用を分ける、という意味です。
たとえば家賃10万円のうち、仕事部屋が家全体の30%なら、3万円を経費にできる。残りの7万円は生活費なので経費にはなりません。この30%が按分割合です。
家事按分ができる要件
家事按分の大前提は「事業に必要な支出であること」と「事業で使った部分を合理的に区分できること」の2つです。
根拠は所得税法第37条と第45条。必要経費は事業に関連するものに限られ、家事上の経費は原則として必要経費に算入できないと定められています。逆に言えば、事業関連部分を明確に区分できれば、その分は経費にできます。
青色申告と白色申告での要件の違い
よく「白色申告は家事按分できない」と誤解されますが、白色でも按分は可能です。ただし要件の書きぶりが違います。
白色申告(所得税法施行令第96条)は「業務の遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合」に按分を認めます。青色申告(同施行令第96条の準用と措置)では、必要経費への算入がより柔軟に扱われます。実務上、白色は事業割合が明確であることをより丁寧に説明できる状態が求められる、と考えておけばいい。
家事按分できる経費と割合の求め方
家事按分できる代表的な経費は、家賃・水道光熱費・通信費・自動車関連費で、それぞれ面積・使用時間・使用量など異なる基準で割合を求めます。
ポイントは「どの費目を、何を根拠に、何%にするか」を自分の言葉で説明できること。基準がバラバラでも構いません。費目ごとに一番実態に合う基準を選べばいい。
家賃・地代の按分(使用面積で計算)
家事按分の家賃は、仕事に使う部屋の面積が家全体に占める割合で計算するのが基本です。
たとえば60平米の賃貸で、15平米の部屋を仕事場にしているなら、15÷60で25%。家賃が9万円なら月2万2,500円が経費です。面積だけでなく、使用時間を掛け合わせる方法もあります。
| 按分基準 | 割合 | 月あたり経費 |
|---|---|---|
| 仕事部屋15平米÷全体60平米 | 25% | 22,500円 |
| 仕事部屋+共用部の一部で30% | 30% | 27,000円 |
| ワンルームで作業時間比40% | 40% | 36,000円 |
電気代・ガス・水道代の按分
家事按分の電気代は、使用時間や仕事で使う部屋のコンセント数・床面積を基準に割合を決めます。
パソコン仕事なら「1日の使用時間÷24時間」や「稼働日数÷月の日数」を使う方法が実態に合います。私は電気代を、平日8時間の稼働を根拠に按分しています。ガス・水道は仕事で使う場面が少ないなら、無理に計上しない方が説明はラクです。
美容室や飲食のように水を大量に使う業種なら、水道代の事業割合は当然高くなります。業種で扱いが変わる、という点は押さえておいてください。
通信費・自動車関連費の按分
通信費は仕事の利用時間や回線の用途で、自動車費は走行距離で按分するのが分かりやすい方法です。
スマホ代なら「仕事の通話・データ利用の割合」、自宅Wi-Fiなら在宅で仕事する時間の割合。自動車はガソリン代・保険・車検・減価償却をまとめて、事業の走行距離÷総走行距離で按分します。走行距離は運転記録アプリやメモで残しておくと後で楽です。
家事按分のやり方と仕訳の具体例
家事按分のやり方は、割合を決める→年間の支出を集計する→事業割合を掛けて経費計上する、という3ステップです。
難しく考える必要はありません。決めた割合を毎月の支出に掛けるだけ。会計ソフトなら按分設定を一度入れれば自動計算してくれます。
割合を決める手順
- 費目ごとに按分の基準を決める(家賃は面積、電気代は時間など)。
- 基準にもとづいて事業割合を計算し、その計算式をメモに残す。
- 年間または毎月の支出額を集計する。
- 支出額に事業割合を掛けて経費計上する。
- 割合の根拠資料(間取り図・時間記録)を保管する。
勘定科目と仕訳例
家事按分の仕訳では、生活費に当たる部分を「事業主貸」で処理するのがコツです。
家賃なら勘定科目は「地代家賃」、電気代は「水道光熱費」、スマホ代は「通信費」。全額を口座から支払っている場合、事業分を各科目に、生活分を事業主貸に振り分けます。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 地代家賃 | 27,000円 | 普通預金 | 90,000円 |
| 事業主貸 | 63,000円 |
Excelで按分を管理する手順
会計ソフトを使わない場合でも、Excelで按分表を1枚作れば管理できます。
私が最初にやっていたのは、費目・年間支出・按分基準・事業割合・経費額の5列を作る方法です。割合を1か所で変えれば経費額が自動で再計算されるようにしておくと、見直しがラク。年末にこの表を印刷して根拠資料と一緒に保管しておけば、税務署に聞かれても即答できます。
| 列名 | 入力内容 |
|---|---|
| 費目 | 地代家賃、水道光熱費、通信費など |
| 年間支出 | 1年間の合計金額 |
| 按分基準 | 面積比、時間比、走行距離比など |
| 事業割合 | 計算した% |
| 経費額 | 年間支出×事業割合(自動計算) |
業種別に見る家事按分の適正割合の目安

適正な按分割合は業種によって大きく変わり、在宅中心なら20〜30%、水道光熱を多用する業種は費目ごとに高く設定できます。
ここは競合記事が薄い部分なので、私の経営者仲間の実例も交えて具体的に書きます。あくまで目安で、実態が違えば数字は動かしてください。
在宅ワーカーの場合
デザイナーやライター、コンサルなど自宅の一室で完結する仕事は、家賃・電気代を20〜30%前後にする例が多いです。
ワンルームだと部屋を面積で分けられないので、作業時間で按分するしかありません。1日8時間・週5日なら、生活時間との比率で30〜40%に届くこともあります。ただし24時間その部屋にいる前提で高くしすぎると説明が苦しくなる。
美容業・小売業の場合
自宅サロンや自宅店舗は、営業スペースの面積割合がそのまま家賃按分の根拠になります。
自宅の一角を美容スペースにしているなら、その面積比で家賃・電気を按分。美容業は水道・電気を多く使うので、水道光熱費は面積比より高めが実態に合うこともあります。小売で自宅を在庫置き場にしているなら、倉庫として使う面積を家賃に含められます。
運送業など自動車を多く使う場合
配送やデリバリーなど車が主役の業種は、自動車関連費の事業割合が70〜90%に達することも珍しくありません。
根拠になるのは走行距離。仕事の配送距離が総走行距離の8割なら、ガソリン・保険・車検・減価償却の8割を経費にできます。逆に家賃・電気は在宅時間が短いぶん低めになる。業種ごとに「厚い費目」が違う、という発想で組み立ててください。
持ち家・減価償却・法人成りなど応用ケースの按分
持ち家や減価償却資産、法人成りでは、単純な割合掛け算だけでは済まず、他制度との兼ね合いに注意が必要です。
ここでつまずく人が多い。私も持ち家と住宅ローン控除の関係で一度ヒヤッとしました。順に整理します。
持ち家(住宅ローン)と住宅ローン控除の関係
持ち家の場合、経費にできるのは住宅ローンの元本ではなく、建物の減価償却費・固定資産税・火災保険料などの事業割合分です。
注意したいのが住宅ローン控除との関係。事業使用割合が大きいと、その割合分は住宅ローン控除の対象から外れます。国税庁は、居住用部分がおおむね90%以上なら全体を居住用として控除対象にできる旨を示しています。つまり事業割合を10%以下に抑えれば、控除を満額使いながら家事按分もできる可能性がある。ここは自分で計算して有利な方を選ぶ場面です。
パソコン・自動車など減価償却資産の按分
パソコンや車のような減価償却資産は、まず減価償却費を計算し、その金額に事業割合を掛けて経費にします。
順番が逆にならないよう注意。たとえば20万円のパソコンを4年で償却するなら年5万円、事業割合70%なら経費は3万5,000円です。10万円未満なら一括経費にできますが、その場合も家事按分は必要です。
開業初年度や期中廃業の日割り按分
事業を年の途中で始めた・やめた場合は、その期間分だけを日割りで按分します。
6月開業なら、家賃や減価償却費も開業日以降の分だけが対象。開業前の私的利用期間まで経費にはできません。開業日を明確にしておくと日割り計算の根拠になります。
法人成りした場合の社宅制度との違い
法人化すると家事按分という考え方はなくなり、代わりに「役員社宅制度」で家賃を経費化します。
個人事業主は事業割合分しか家賃を落とせませんが、法人が契約者となって役員に社宅として貸す形にすると、一定の賃貸料相当額を役員から徴収する条件で、会社負担分を経費にできます。実務上、按分より社宅の方が経費化できる幅が広いケースがある。法人成りを検討するなら、この差は税理士に試算してもらう価値があります。
税務調査で否認されないための根拠資料と注意点
税務調査で否認されないための最大の対策は、按分割合の計算根拠を書面で説明できる状態にしておくことです。
調査官が見るのは割合の高さそのものより「なぜその割合なのか」を説明できるか。数字が説明できないと、そこが崩される。
否認されやすいポイントと実例
否認されやすいのは、計算根拠を示せない・割合が実態より高い・区分できる資料がない、この3つです。
- 按分割合の計算方法を口頭でも説明できない場合。
- 仕事の実態に対して按分率が明らかに高すぎる場合。
- 生計を一にする家族へ支払う家賃を経費計上している場合(これは原則経費にできません)。
- 事業用と私用を区別する資料が一切ない場合。
間取り図・使用時間記録など根拠資料の作り方
根拠資料は、間取り図・使用時間の記録表・業務日報の3点をそろえておくと強いです。
間取り図には仕事部屋の面積と全体面積を書き込み、面積比の計算式を添える。電気代を時間按分するなら、稼働時間を記録した表を月単位で残す。私はカレンダーに稼働日を印だけつけて、年末にまとめています。完璧なものより、継続して残っている記録の方が信用されます。
