役員報酬の中小企業の平均は約661万円|相場と決め方を徹底解説

ただ、この数字をそのまま自社に当てはめるのは危険です。役員報酬は社会保険料・所得税・住民税の負担と直結し、決め方ひとつで手取りが何十万円も変わります。
この記事では、規模・業種別の相場、損金算入の3要件、税金を踏まえた決め方、私自身がやらかした失敗まで、経営者目線で書きます。自社の適正額を判断する材料にしてください。
中小企業の役員報酬の平均はいくら?まずは結論

国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、資本金2,000万円未満の株式会社の役員報酬の平均は661.1万円です。e-Stat経由で確認できる公的な数字です。

中小企業の役員報酬は平均約661万円
まず押さえておきたいのは、これは「平均年収」ではなく統計上の「年間報酬額(役員給与)」だということ。社長1人の会社でも、雇用契約の給与ではなく役員報酬として集計されます。
男女計の役員全体の平均は849.2万円。つまり資本金2,000万円未満の中小企業は、役員全体の平均より低い水準にあります。大企業の役員が平均を引き上げている構図です。
会社規模・売上規模別の平均データ
同じ調査では、資本金の規模が大きくなるほど役員報酬の平均が上がっていきます。下の表は国税庁の集計値です。
| 資本金区分 | 平均年間報酬額 |
|---|---|
| 2,000万円未満 | 661.1万円 |
| 2,000万円以上 | 999.8万円 |
| 5,000万円以上 | 1,323.5万円 |
| 1億円以上 | 1,458.0万円 |
| 10億円以上 | 2,092.8万円 |
正直に言うと、私が一番伝えたいのはここです。資本金2,000万円未満と1億円以上では、平均で2倍以上開く。あなたの会社が小規模なら、661万円という数字を上限の目安と考えるくらいが現実的です。
業種別・従業員数別・地域別の相場比較
業種別・従業員数別・地域別の細かい相場を「確実な数値」として出したいところですが、ここは正直に書きます。今回確認できた一次情報(国税庁・e-Stat)で確実に裏づけられるのは資本金区分別の数字までです。
業種別や地域別の数字は二次情報サイトに散見されるものの、原典の表に当たらないと精度が怪しい。捏造して埋めるより、ここは「資本金規模で判断する」と割り切るのが安全だと考えます。
そもそも役員報酬とは?給与・人件費との違い
役員報酬は、株式会社では取締役・会計参与・監査役など、合同会社では業務執行社員・代表社員が受け取る報酬です。社長1人の会社でも、これは「給与」ではなく役員報酬になります。

役員報酬と従業員給与の違い
最大の違いは「自由に変えられるかどうか」。従業員の給与は会社が判断していつでも増減できますが、役員報酬は法人税法のルールで縛られ、原則として期の途中で動かせません。
ここを知らずに「今月は利益が出たから役員報酬を上げよう」とやると、増額分が損金(経費)に認められず、税金で痛い目を見ます。私の知人の社長が実際にこれをやりました。
役員報酬は人件費に含まれるのか
会計上、役員報酬は人件費の一部として扱われます。販管費の中の人件費に計上されるのが一般的です。
ただ「人件費だから当然に経費になる」と思い込むと危ない。従業員給与と違い、役員報酬は損金算入の要件を満たさないと税務上の経費として認められません。会計上の人件費=税務上の損金、ではないのです。
役員賞与・配当金との違い
役員賞与は、原則として損金に算入しにくい。事前確定届出給与などの要件を満たさない限り、ボーナスを払っても経費にならず税金がかかります。
配当金は、会社の利益から株主に分配するお金で、これも損金にはなりません。役員報酬・賞与・配当はそれぞれ税の扱いが違うので、分けて設計する必要があります。
役員報酬の損金算入の3つの要件と改定ルール
競合記事が薄いのがここ。役員報酬を経費にするには、法人税法上の3つの型のどれかに当てはめる必要があります。原則は「定期同額給与」です。

定期同額給与とは
毎月同じ額を支払う、もっとも基本的な型です。月50万円なら12ヶ月とも50万円。これを守れば全額が損金になります。
中小企業の99%はこれで十分。私の会社もずっとこの型です。シンプルが一番、というのが実感です。
事前確定届出給与とは
役員にボーナスを払って損金にしたい場合に使う型。支給する時期と金額を事前に税務署へ届け出ることで、損金算入が認められます。
ただし届け出た日・金額とぴったり一致しないとアウト。1日ずれても、1円違っても否認されます。使うなら覚悟が要る制度です。
業績連動給与とは
利益などの指標に連動して報酬を決める型ですが、有価証券報告書での開示など厳しい要件があり、中小企業にはまず現実的ではありません。名前だけ知っておけば十分です。
改定できる時期は事業年度開始から3ヶ月以内
役員報酬を改定するなら、原則として事業年度開始日から3ヶ月以内。3月決算なら4〜6月の間に決めるのが実務の基本です。
なお厳密な期限や例外(業績悪化による減額など)は会社の事業年度と状況に依存します。実際に改定するときは国税庁の通達を確認するか、税理士に裏を取ってください。ここは要確認事項として扱います。
役員報酬の具体的な決め方とステップ

平均661万円という数字はあくまで他社の話。自社の適正額は、生活費・利益・社会保険料・税金の4つから逆算するのが私のやり方です。

生活費・前職給与・付加価値分配率から算出する
まず下限は「自分と家族が生活できる額」。前職の給与水準をスライドさせる方法も、最初の目安としては悪くありません。
上限は会社の付加価値(粗利)から逆算します。粗利のうち人件費に回せる割合を決め、その範囲で役員と社員に配分する考え方です。
利益と社員の給料のバランスを考える
社員の給料との差を作りすぎないこと。社長だけ突出して高いと、社員の士気にも響くし、税務上も「過大役員報酬」として目をつけられやすくなります。
私の感覚では、利益が出ているうちは会社に内部留保を残し、役員報酬は欲張らない。これが長く会社を持たせるコツでした。
社会保険料と税金を踏まえた手取り最大化
ここが一番のキモ。役員報酬を上げると、所得税・住民税だけでなく社会保険料(会社負担+個人負担で約30%)も増えます。額面を上げても手取りが思ったほど増えないのはこのためです。
だから「役員報酬は生活に必要な分+αに抑え、残りは会社の利益として法人税で課税、必要なら退職金や配当で受け取る」という設計が効いてきます。法人税率と所得税率の差を使う発想です。
決定までのチェックリスト
| 確認項目 | ポイント |
|---|---|
| 生活に必要な最低額 | 家族の生活費・住宅ローンなどを把握したか |
| 会社の年間利益見込み | 報酬を払った後に赤字にならないか |
| 社会保険料の負担 | 会社負担分を含めて資金繰りが回るか |
| 社員給与とのバランス | 差をつけすぎていないか |
| 改定時期 | 事業年度開始から3ヶ月以内に決めたか |
| 損金算入の型 | 定期同額給与の要件を満たしているか |
役員報酬を決める際の注意点と失敗リスク
役員報酬は、高すぎても低すぎても痛い。私自身、創業当初に低く設定しすぎて生活が苦しくなり、慌てて翌期に上げた経験があります。

高く設定しすぎた・低く設定しすぎた場合のリスク
高くしすぎると、会社が赤字に転落しても期中は減額できず、資金繰りを直撃します。さらに社会保険料と個人の所得税・住民税が重くのしかかる。
逆に低くしすぎると、個人の手取りが足りず生活が回らない。社会保険の将来の年金額も減ります。どちらに振っても損なので、慎重に決める価値があります。
家族役員(配偶者・親族)への設定の注意点
配偶者や親族を役員にして所得を分散させる手は有効ですが、実態が問われます。実際に経営に関与していない家族へ高額な報酬を払うと、税務調査で「過大」と否認される定番パターンです。
勤務実態、職務内容、決定の議事録。この3点を残しておかないと、後で説明できません。私は配偶者の業務日報を残すようにしています。
赤字企業・創業期の現実的な決め方
赤字や創業期は、無理に高い役員報酬を設定しないこと。報酬を払って会社が現金不足になれば本末転倒です。
創業期は役員報酬0円も選択肢。ただし0円だと社会保険に入れず生活保障が薄くなるので、私なら最低限の生活費だけは確保する額にします。極端な0円設定は勧めません。
減額・変更時の手続き(株主総会決議・議事録)
役員報酬の決定・変更は、株主総会の決議が必要です。そして必ず議事録を残す。これがないと、税務上「いつ、いくらに決めたか」を証明できません。
業績悪化による期中の減額は例外的に認められますが、客観的な理由と決議の記録が前提です。口頭で決めて終わり、は一番危ない。
税務調査で否認されないための対策と実例
役員報酬まわりは税務調査で必ず見られるポイント。否認されると、損金にならず追徴課税という最悪の結果になります。

否認されやすいケースと判断基準
よく否認されるのは、期中に勝手に増額したケース、家族役員への過大報酬、事前確定届出給与の金額・時期のズレ。いずれも「ルールを外した」ことが原因です。
過大かどうかの判断は、職務内容・会社の利益・同業他社の水準などから総合的に見られます。明確な線引きがないからこそ、説明できる材料を持つことが防御になります。
否認を防ぐための準備と記録
対策はシンプルです。株主総会議事録を毎期残す。定期同額を崩さない。家族役員には勤務実態の記録を残す。この3つで大半は防げます。
税理士に任せきりにせず、議事録の日付と報酬額だけは自分で確認しておく。私はここを自分でやるようにしてから、調査でも指摘されなくなりました。
役員退職金(役員退職慰労金)の平均と決め方

役員報酬を抑えて、退任時に退職金で受け取る。これは税制上かなり有利な出口です。退職金は税負担が軽くなる仕組みがあるためです。

平均支給額の目安
役員退職金の平均支給額について、今回確認できた一次情報の範囲では確実な公的数値を提示できません。ここは数字を捏造せず、計算方法と準備手段に話を絞ります。
計算方法(功績倍率方式)
実務で広く使われるのが功績倍率方式です。「最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」で算出します。社長の功績倍率は3倍程度が一つの目安として使われます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率 |
| 例(月額80万円・20年・倍率3.0) | 80万円 × 20 × 3.0 = 4,800万円 |
ここで効いてくるのが「最終月額報酬」。退職金を大きくしたいなら、退任前に役員報酬をある程度の水準にしておく必要があります。報酬を絞りすぎると退職金も小さくなる、というジレンマです。
主な準備方法
私が実際に使っているのは小規模企業共済と経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)。掛金が所得控除・損金になり、退職時や解約時にまとまった資金を受け取れます。
生命保険を活用する方法もありますが、近年は損金算入のルールが厳しくなっています。共済のほうが手堅い、というのが正直な私の評価です。
役員報酬についてよくある質問(FAQ)
最後に、役員報酬でよく一緒に調べられる疑問に、国税庁の数字をベースに答えます。

よくある質問
役員報酬は、税理士任せにせず一度は自分で数字を組んでみてほしい領域です。平均を知った今日が、自社の適正額を見直す日になれば十分です。
