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役員報酬の設計

役員社宅で節税する方法|賃貸料相当額の計算と家賃設定を徹底解説

中本 雄二 / 更新:2026-07-04
役員社宅で節税したいけれど、家賃の自己負担額をいくらにすればいいのか、税務調査で否認されないか不安──そんな経営者は多い。結論を先に言うと、役員社宅は会社が借りて役員に貸し、役員から「賃貸料相当額」を徴収すれば、会社負担分の家賃をまるごと損金にできる合法の節税だ。
  • 役員社宅は、会社名義で借りた住宅を役員に貸し、賃貸料相当額を役員から徴収する仕組みで節税になる。
  • 賃貸料相当額は固定資産税課税標準額をもとに計算し、小規模住宅なら家賃の1〜2割程度に収まることが多い。
  • 役員負担がゼロや少額すぎると差額が給与課税されるため、賃貸料相当額以上の自己負担が必須。
  • 水道光熱費・駐車場代・町内会費は原則として役員個人の負担で、会社が持つと課税対象になる。
  • 導入には社宅規程の整備と会社名義への契約切り替えが必要で、既存の持ち家の後付けは難しい。

役員社宅の節税とは?仕組みと結論を先に解説

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役員社宅の節税とは、会社が住宅を借り上げて役員に貸し出し、役員から賃貸料相当額を受け取ることで、会社が支払う家賃と受け取る家賃の差額を損金にする方法だ。

私自身、自分の会社で社宅を導入しているが、いちばんの旨みは「役員報酬を上げずに手取りを増やせる」点にある。報酬を上げれば所得税も社会保険料も増える。社宅ならそこを回避できる。

役員社宅が節税になる理由

役員社宅が節税になる理由は、会社が払う家賃のうち賃貸料相当額を超える部分が、会社の損金(経費)になるからだ。

たとえば月20万円の物件を会社が借り、役員から賃貸料相当額として3万円を徴収したとする。差額の17万円が会社の経費になり、その分だけ課税所得が減る。役員は個人で20万円払うより負担が軽い。

社宅節税を経営者が使うと、法人税の圧縮と役員個人の可処分所得の増加を同時に狙える。ここが給与を上げる節税との決定的な違いだ。

役員社宅として認められる要件

役員社宅として認められる要件は、会社が契約当事者(賃借人)であること、役員から賃貸料相当額以上を徴収していること、社宅規程などで制度が整備されていることの3点だ。

逆に言えば、役員個人が借りた部屋の家賃を会社が肩代わりするだけでは社宅にならない。それは単なる給与の上乗せとみなされる。契約名義が誰かは、税務上とても重い。

役員社宅と従業員社宅の税務上の違い

役員社宅と従業員社宅は、賃貸料相当額の計算式そのものは同じだが、豪華住宅の判定や徴収額の下限で扱いが分かれる。

役員社宅と従業員社宅の税務上の主な違い
項目役員社宅従業員社宅
家賃の計算基準賃貸料相当額賃貸料相当額
最低限徴収すべき額賃貸料相当額の全額賃貸料相当額の50%以上
豪華住宅の特別ルールあり(実勢家賃で課税)なし

従業員なら賃貸料相当額の半額を徴収すれば非課税だが、役員は原則として全額の徴収が必要。ここを混同すると差額が給与課税される。

賃貸料相当額とは?家賃の計算方法を数値例で解説

賃貸料相当額とは、役員社宅で役員が最低限負担すべき家賃のことで、固定資産税の課税標準額をもとに国税庁の計算式で求める金額だ。

ここが役員社宅節税の心臓部だ。市場家賃ではなく、この計算式で出した額を役員が払えばいい。だから多くの場合、実際の家賃よりずっと安い自己負担で済む。

賃貸料相当額の意味と考え方

賃貸料相当額は、住宅の規模によって計算式が変わり、小規模住宅がもっとも役員に有利な金額になる。

小規模住宅の賃貸料相当額は、次の3つの合計で計算する。

  • 建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
  • 12円 × その建物の総床面積(平方メートル)÷ 3.3
  • 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%

この式で出た金額の合計が、役員が毎月払えばいい下限だ。都心の高い物件でも、課税標準額ベースで計算すると月数万円に収まるケースは珍しくない。

小規模住宅・非小規模住宅・豪華住宅の判定早見表

住宅は床面積と建物の構造によって3タイプに分かれ、それぞれ計算式が異なる。

住宅3タイプの判定と賃貸料相当額の計算
区分判定基準賃貸料相当額の考え方
小規模住宅法定耐用年数30年以下は床面積132㎡以下/30年超は99㎡以下上記3要素の合計(役員に最も有利)
非小規模住宅小規模の面積を超え、豪華に該当しないもの建物12%(木造以外10%)+敷地6%を年額とし12分の1
豪華住宅床面積240㎡超で取得価額等が著しく高額、またはプール等の設備がある実勢の市場家賃(賃貸料相当額の特例なし)
節税効果がいちばん高いのは小規模住宅だ。豪華住宅と判定されると計算式の恩恵が一切なくなり、市場家賃をそのまま徴収しないと差額が課税される。

固定資産税課税標準額の調べ方と証明書の取得手順

固定資産税課税標準額は、物件所在地の市区町村役所で固定資産評価証明書を取得すれば確認できる。

自社所有の物件なら話は早い。毎年届く固定資産税の課税明細書に課税標準額が載っている。問題は賃貸物件のときだ。

賃貸の場合、課税標準額を知っているのは所有者であるオーナーだ。そこで賃貸借契約時に、貸主か管理会社を通じて評価証明書の写しを依頼する。私の経験では、社宅目的だと正直に伝えると出してくれることが多い。

  1. 物件所在地の市区町村の窓口(資産税課など)で固定資産評価証明書を申請する。
  2. 賃貸物件は所有者本人でないと取得できないため、オーナーまたは管理会社に写しを依頼する。
  3. 入手した課税標準額(建物分・土地分)を使って賃貸料相当額を計算する。

実際の家賃計算シミュレーション

小規模住宅の具体例で計算すると、市場家賃20万円の物件でも役員の自己負担は月2〜3万円台になることがある。

仮に建物の課税標準額500万円、敷地の課税標準額1,000万円、総床面積60㎡の小規模住宅で計算してみる。

小規模住宅の賃貸料相当額シミュレーション
計算要素計算式金額
建物分500万円 × 0.2%10,000円
床面積分12円 × 60㎡ ÷ 3.3約218円
敷地分1,000万円 × 0.22%22,000円
賃貸料相当額(月額)3要素の合計約32,218円

この物件の市場家賃が20万円なら、会社は20万円払い、役員から約3万2千円を徴収する。差額の約16万8千円が毎月会社の損金になる。年間で約200万円だ。

実際に自分で数字を入れて計算して驚いたのは、敷地の課税標準額の影響が思ったより大きいこと。土地の評価が高い都心ほど自己負担も上がる点は頭に入れておきたい。

経営者が得られる社宅節税のメリットとデメリット

社宅節税の最大のメリットは会社負担分の家賃が損金になることで、最大のデメリットは敷金など初期費用と導入の手間だ。

正直に言えば、この制度はメリットのほうが圧倒的に大きい。手間はかかるが一度作れば毎月効いてくる。

会社負担分の家賃を損金にできる

会社が払う家賃から役員徴収額を引いた差額は、全額が会社の損金になる。

月16万円の損金が積み上がれば年間約192万円。法人実効税率をざっくり30%とすれば、それだけで年50万円以上の法人税を圧縮できる計算だ。

役員の可処分所得が増える

役員社宅を使うと、役員報酬を上げずに住居費の負担を減らせるため、手取り(可処分所得)が実質的に増える。

報酬を月20万円上げて家賃に充てると、所得税・住民税・社会保険料が乗ってくる。社宅ならその重い上乗せを避けられる。同じ「家に住む」でも税負担がまるで違う。

敷金など初期費用と導入の手間

デメリットは、会社名義での契約に伴う敷金・礼金・保証金といった初期費用が会社のキャッシュを圧迫することだ。

敷金は原則として資産計上で経費にならず、契約更新料などの事務も発生する。加えて社宅規程の作成という一手間がある。とはいえ、ここで面倒がって導入しないのはもったいない。

役員社宅で節税効果を最大化するポイントと注意点

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節税効果を最大化する鍵は、役員の自己負担を賃貸料相当額ちょうどに設定し、それ以下にも過大にもしないことだ。

設定を誤ると、せっかくの節税が給与課税で消える。ここは慎重にいきたい。

役員の家賃負担は自己負担額の設定がカギ

役員の家賃負担は、賃貸料相当額と同額に設定するのが、節税効果と安全性のバランスがもっとも良い。

よく「家賃の50%を負担すればいい」という話が出るが、それは従業員社宅のルールだ。役員が50%で済むと考えると危ない。役員は賃貸料相当額の全額徴収が原則で、市場家賃の50%だと過大徴収になり節税効果が薄れることもある。

役員の自己負担は「市場家賃の◯%」で決めてはいけない。基準は必ず賃貸料相当額。ここを取り違えると税務調査で狙われる。

無償・少額にすると給与課税される

役員から家賃を一切徴収しない、または賃貸料相当額より少なく徴収すると、その差額は現物給与として役員の給与所得に加算され課税される。

「どうせ自分の会社だから」と無償にしてしまうケースを見かけるが、これが一番危ない。無償なら賃貸料相当額の全額が給与扱いになり、所得税も社会保険料も増える。節税どころか逆効果だ。

水道光熱費・駐車場代・共益費など付随費用の課税・非課税一覧

家賃以外の付随費用は、会社が負担すると原則として役員の給与課税につながるものが多いので、切り分けが重要だ。

付随費用の課税・非課税の切り分け
費用項目会社負担にした場合の扱い
水道光熱費役員個人の負担が原則。会社負担分は給与課税
駐車場代役員個人が使う分は給与課税
町内会費・自治会費役員個人の負担が原則。会社負担は給与課税
共益費・管理費家賃と一体で会社負担でき、賃貸料相当額の計算に含めて扱えるケースが多い

私の会社では、電気・ガス・水道は役員個人の口座から引き落とすようにしている。線引きを最初にはっきりさせておくと、あとで揉めない。

住宅ローン控除は適用されない

役員社宅は会社名義の賃貸なので、役員個人の住宅ローン控除は使えない。

ここは判断が分かれる。すでにマイホームを買ってローン控除を受けているなら、無理に社宅へ切り替えないほうが得なこともある。控除の残額と社宅の節税額を天秤にかけて決めたい。

社宅制度の導入手続きと社内規定の作り方

社宅制度の導入は、社宅規程の作成→会社名義での賃貸契約→役員からの家賃徴収の仕組み化、という順で進める。

手順そのものは難しくない。抜けやすいのは規程と契約名義だ。

導入から運用までの手続きフローとスケジュール

導入の基本フローは、社宅規程の整備、物件選定、会社名義での契約、賃貸料相当額の計算、給与天引きの設定という流れになる。

  1. 社宅規程を作成し、取締役会や株主総会など機関決定で正式に定める。
  2. 対象物件を選び、会社名義で賃貸借契約を結ぶ。
  3. 固定資産評価証明書を取得し、賃貸料相当額を計算する。
  4. 役員から徴収する自己負担額を決め、給与天引きなどで毎月徴収する。
  5. 家賃・徴収額を毎月正しく仕訳し、証跡を残す。

社宅規程に記載すべき必須項目

社宅規程には、対象者・対象物件の範囲・自己負担額の算定方法・費用負担の区分・退去時の取り扱いを必ず盛り込む。

  • 社宅の利用対象者(役員・従業員の範囲)
  • 対象とする物件の条件と上限家賃の目安
  • 役員の自己負担額を賃貸料相当額で算定する旨
  • 水道光熱費・駐車場代など付随費用の負担区分
  • 退任・退職時の明け渡しと契約解除のルール

規程がないまま社宅を運用すると、税務調査で「制度として実在するのか」を問われる。文書は最強の証拠だ。

賃貸契約を会社名義に切り替える実務

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中本 雄二

会社経営者 ・ 節税・補助金を実務で運用 ・ セーフティ共済・小規模企業共済を活用

中小企業の経営者。自分の会社で節税と補助金を実践してきた。税理士に任せきりにせず、制度を自分で調べて使う派。失敗や払いすぎた経験もあるからこそ、現実的な打ち手を語れる。

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